様々な恋愛事情

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 千愛希があくまでも仮説だ、と言っていた理由とほとんど同じでまさか本当にこんなくだらない理由だったとはな、ともはや怒る気にもなれなかった。 「まぁ確かに俺達は付き合ってた期間もあったから、その間他の部下達より多少面倒をみてやる機会は多かったと思う」 「多少じゃないですよ。3年じゃないですか、3年!」 「だったとしても、あくまでも仕事の件で言ったら教育係みたいなもんだ。就職したての頃は、俺は千愛希よりも鍋田に力を注いでたつもりだよ。俺がアプリ制作について本格的に教え始めたのは鍋田がある程度自立してからだし。それにお前は前社で学んだこともあったからアプリ制作においては千愛希よりも長けていたはずだ」 「そうっすよ! 俺は土浦さんと違って1年目からプログラマーとして学んできたんです! 営業やってたような人に負けないだけの努力をしてきました! でも出世したのは土浦さんだった」  鍋田は奥歯を噛み締めて、納得がいかないというように睦月を睨み付けた。睦月は腕を組んで、椅子の背もたれに背を預けた。 「そうか。言いたいことはそれだけか」 「……それだけって……他にもありますよ! 社長のお気に入りで、どうせ色目を使ってのし上がったんですよね!」 「そうかもしれないな。色目を使って爆発的に売れるアプリを制作できるなら、是非その色気を振り撒いて欲しいもんだね」 「……曽根さんまで俺をバカにするんすね」 「バカにしてるのはどっちだ?」  鼻を鳴らした鍋田に睦月は鋭い眼光を向けた。普段穏やかな睦月が見せない威圧感に鍋田はうっと怯んだ。  
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