様々な恋愛事情

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「悪いがうちはそんなにレベルの低い会社じゃない。社長を初め、副社長達も元は俺の友人だが仕事仲間として尊敬できるヤツらだよ。俺達は経営者であって趣味の片手間に会社を立ち上げたわけじゃない。女性1人に振り回させれて能力のない人間を出世させるような愚かなヤツはいない。お前は千愛希だけじゃなく、俺達までも見下してるじゃないか」 「み、見下してるなんか!」 「いいか、彼女はれっきとした有力者だ。女性としての武器も、コネもそんなものなくてもどこでものし上がれる。言わせてもらうが、スタート時点で鍋田の方がアプリ制作には長けていたのに現時点で差が生じているのは、俺が贔屓したからでも大崎のお気に入りだからでもない。それが彼女の実力だ。  お前の悪行を暴き、battereを営業停止にまで追い込んだのは彼女だ。お前が出世を望んだ会社の全社員をもってしても千愛希の作った現状を打開できないわけだ。お前が憧れてた地位なんて所詮そんなものってことだよ」  いつでも優しかったはずの睦月に突き放された瞬間だった。今まで見たことのない冷たい眼をしていた。鍋田が仕事でミスをしようと、アプリの企画書が通らなくても「次頑張れ」と笑顔で励ましてくれたはずの睦月。  先に裏切ったのは鍋田なのだが、どこかで睦月ならこのやり場のない劣等感を理解してくれるような気がしていた。  鍋田は目にいっぱいの涙を浮かべ、肩を震わせた。
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