様々な恋愛事情

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「あぁ。本当に千愛希のおかげだよ。まさかこんなに早く配信できるようになるとはな……。なぁ、あのゲームエンジンだけどさ、あれを商業化する気はないか? あのオートシステムならこぞって使いたがる会社はあると思うんだが」 「そうでしょうね。でも、私は嫌ですよ。プログラマーは、自分達でプログラミングを操るからこそプロなんです。それに、それがやりたくて仕事をしてます。AIが賢くて頑張ってくれるのはとても仕事が楽になる反面、人の手でしか作れないものがおざなりになってしまう気がします……」  千愛希が少し寂しそうに眉を下げると、睦月はふっと頬を緩め「それもそうだな……千愛希らしい」と言った。  千愛希はそんな睦月にはっと瞼を上げ「あ、でも追加でAIシステムを改良したのは曽根さんなので、曽根さんが商業化したいというなら特許の取り下げも考えますよ」と慌てたように言った。 「いや、俺はいいよ。千愛希のゲームエンジンがなければ俺だって思いつかなかったし、元々のゲームエンジンは使いこなせなかった。あくまでも提案の話だよ」 「……曽根さんは欲がないですね」 「そんなことない。クリエイターとしては俺ももっと成長したいって貪欲に足掻いてるよ」 「鍋田さんにもそれくらいの意地があったらよかったのに」 「まぁ……仕方ないな。俺も見る目がなかったってことだな」  睦月はそう言って少し笑ったが、可愛がっていた部下だけにやりきれない様子が千愛希にも伝わった。
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