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睦月は部下想いでいい上司ではあるが、優し過ぎるが故に、優しさと甘えを勘違いしてしまう社員も僅かにいた。
良かれと思って目にかけていた行為が、反対に恨みを買う結果に繋がることもあるのだと睦月もまた身に染みて学ぶこととなった。
そのアプリが昨日配信された。千愛希は怒涛のように過ぎ去ったこの2週間を思い出し、どっと疲れが押し寄せた。
「お疲れ様でした」
ブローを終えた美容師がにっこり笑って言った。
久しぶりにまともな休みが取れたし、今日はこのまま家でゆっくりしよう。
そう見慣れない自分の姿を見ながら思った。明日は日曜日で会社は休みだが、配信されたアプリのシステムエラーがないか睦月と確認作業を行う予定が組まれていた。
本日は睦月1人で事務所に残り、トラブルがないかパソコンに張り付いている。
今まで睦月から連絡がないということは、無事にダウンロードできているんだろうと千愛希の気持ちも軽くなった。
確認作業はきっちり行ったし、なにもなければ明日は律に会える。
千愛希は、美しい黒髪を靡かせて家までの帰路をブーツのヒールを鳴らしながら急いだ。
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