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12月20日 日曜日
街中から少し外れた駿河区内。【Cafe 星の銀貨】のドアを開ける。直ぐに店員がやってきて「いらっしゃいませ。お連れ様がお待ちですよ」と声をかけた。
「ありがとうございます」
千愛希の顔を見るなり笑顔で声をかけた店員に、はにかみながら千愛希がそう答えると「こちらへどうぞ」と案内された。席につく前から一際目立つ人物に視線がいった。文庫本を開いたまま目を伏せているせいか、普段よりも更に中性的に見えた。
若い女性店員も慣れたもので、真っ直ぐ律の元へ案内した。笑顔で去っていく彼女のことは、千愛希も何度か見たことがあった。
律と待ち合わせをする時には大体このカフェだった。ザワザワと賑わう街中のカフェは人も多く、入れ替わりが激しい。
チェーン店なんかは人気で長居は中々しづらい。そんな中で、居心地の良い店を見つけたのだ。
千愛希がCafe 星の銀貨を見つけたのは3年前の仕事終わりだった。すっかり疲れ果て、コーヒーでも飲みたいと思ったが、金曜日の夜であり、時間も夕食時を回っていたからかどこも混んでいて座れなかった。
仕方がない、今日は諦めて帰るかと車を停めてあった駐車場まで歩いている途中で見つけたのだった。
ふらっと入ったそこは、モダンな雰囲気で客層も落ち着いていた。若い子もちらほらいたが、騒ぐような子達はおらず静かにコーヒーを飲んで帰ることができた。
それから千愛希はすっかりお気に入りでCafe 星の銀貨に通うようになった。律と出会い彼もコーヒーが好きだと知ったのだが、律は既にこの場所を知っていた。それどころか月に一度は必ず訪れるというほど千愛希同様お気に入りの店であった。
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