10316人が本棚に入れています
本棚に追加
2人はそれからいつもコーヒーといえばこの店を選ぶ。時には冒険しようと違う店にも足を運んだが、やはりここの味が1番美味しい気がする、と専らこの店ばかりになった。
1人ずつでも目立つ容姿の2人が向かい合って楽しそうに会話する姿は、店員達の間でも美男美女のカップルとして有名である。
常連以外の客が訪れれば、物珍しそうに2人に視線を移してはコソコソと2人の容姿を褒め讃える会話に花を咲かせた。
「ごめん、お待たせ」
「いや。日曜日まで仕事だなんて大変だね」
顔を上げた律は、本を閉じて少し微笑んだ。30分遅刻した千愛希にも穏やかに接する律。けれど、千愛希の姿を見て大きく目を見開いた。
「律だってそんな日もあるでしょ」
「まぁ、たまにね」
千愛希は席に着くなりブラックコーヒーを注文した。それから再び律に視線を移し、「私の方は一段落ついたの。ようやく土日休みがまたもらえるかな」と言った。
「そう。今回は長かったね、お疲れ様」
「うんうん、色々あったんだよ」
「こっちもそれなりに」
「え? 仕事でトラブル?」
「いや、プライベート」
眉を下げた律に千愛希は首を傾げた。律はそんな千愛希にふっと笑って「雰囲気変わった」とだけ言った。
まどかに似せていた髪型も色も、律が最後にみた姿違っていた。服装もフェミニンなブラウスとフレアスカート姿が多かったが、パリッとしたシャツにタイトなスカートを身につけた千愛希。
美人でありながら、どこか可愛らしさやあどけなさが垣間見れていたが、すっかり大人の色気に包まれた千愛希に律は少しだけ息を飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!