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「蓮が浮気してさ……」
「……」
律が気まずそうだったため、なんとなく千愛希も気まずくなった。話題を変えたはずが、婚約破棄の下りでする話じゃなかったと察したのだ。それでも悪い方の報告から聞くと言ったのは千愛希。
「あんなに嬉しそうに指輪の話してたから、彼女さんのこと凄く好きなんだと思ってたけどそうでもないんだね……」
「いや……それが未練すごくてさ。ならなんで浮気なんてって話なんだけど……」
「結婚間近で浮気なんて彼女さんも許せないだろうしね」
「うん……」
律があまりにも言いにくそうに顔を歪めるものだから、話を追求してみれば、叶衣の親友に手を出したことを知った千愛希。更に、その女性は自分の親友の妹だっただなんて聞かされたものだから、さすがの千愛希も呼吸が止まりそうなほど驚いた。
「それは……救いようがない」
「うん。だから今もめにもめててさ」
「現在進行形なのね」
「うん」
ややこしいことにその親友の璃空が叶衣のことが好きで、仲良い分付き合うまでには至らないだろうというところまで律は話した。
こんなドロドロとした親友達の話を1人で抱えているのもモヤモヤしていた。
他人の恋愛事情など知ったことじゃない。そういつもなら突っぱねる律だが、見事に巻き込まれ、蓮だけでなく璃空からも叶衣からも連絡がくるのだから律も自分だけ知らぬ顔はできなかった。
こんな地獄絵図を他人に話して聞かせることも律には普段ないことだが、自然と千愛希に話したことで少しモヤモヤしていた胸のつかえが解けていくような気がした。
1人で3人分の相談を聞くのは気が重い部分もあったのだ。
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