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律には驚異と共に、興味も沸いた。あんなに恋愛に興味がなかったはずの璃空。璃空に似てると言われるのは全くいい気がしなかったが、本当は実感していた部分もあった。
同じように恋愛感情をもったことがなく、恋愛に夢中になったことのない人間。自分と同じような人種がいることにどこか安心していた。
けれど、そんな璃空がこんなにも早く結婚を決意するほど叶衣に夢中になっていただなんて思ってもみなかったから。
律が初めて恋愛感情を抱いた対象はまどかだったが、既に周と結婚していてどうしようもなかった。その恋心を捨てる他なかった。
もし次に恋愛感情が沸いたなら、諦めたくないと思う一方で、まどかの時のような実感を得られずにいた。
自分と似た璃空は、いつその気持ちに気付いたのか。単純に興味があった。
「別に冷やかしじゃない。ちょっと……璃空だから聞きたいと思って……」
珍しく慎重に言葉を選ぶ律の声に、璃空は暫く黙ってから「わかんない」とだけ答えた。
蓮のように面白がって追求してきたなら、すぐに電話を切ってやろうと思った璃空だが、何だか悩んでいるような律の声に、なんとなく直感が働いた。
『璃空だから聞きたい』
その言葉がなければ絶対に言わないと思っていたが、自分と似た部分を持ち合わせていると璃空も気付いている。叶衣に夢中になったことに一番驚いているのは璃空自身なのだ。
律に彼女がいることは聞いているが、面識はない。ただ、蓮のように度々嬉しそうに恋愛の話をするわけではない律。璃空には、律と千愛希の関係は、叶衣の前に付き合った婚約者と自分を見ているように思えたのだ。
好きなことには変わりない。けれど、どこか友達の延長線で、愛情だけれど友情に近い。家族になるのは嫌じゃないけれど、恋愛の好きとは少し違う。そんな複雑な関係。
同じような境遇に今立たされている律が、璃空に興味を抱くのもまぁ、当然かと思えた。
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