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「わかんないけど、蓮と付き合うのは嫌だと思ったよ。色々世話を焼いてやりたいと思ったし。叶衣が幸せなら相手は俺じゃなくてもいいかなって思ったから身を引いたけどさ」
「うん」
「蓮と別れたら、蓮以外の男には絶対渡したくなかった」
そうキッパリ言ってのけた璃空。まさか璃空がここまで答えてくれるとは思っていなかった。思えば、いつも律は相談を受ける側で、自分の相談などしたことがなかった。恋愛に関しては皆無だ。
璃空の考えていることはイマイチよくわからない。それは確実に璃空の言葉が足りないから。こんなふうに自分の気持ちを言葉にすることなど絶対にない。
律だから言った。そんな言葉が聞こえてきそうで、律はぎゅっと目を閉じた。
「叶衣さ、璃空とは友達でいたいって言ってた」
「うん。本人から断られたよ。まぁ、叶衣が決めることだから、それならそれで仕方ないって思って一旦受け入れた」
「諦めたってこと?」
「違う。叶衣がそうしたいって言ったからそうしただけ。自分の気持ちだけ押し付けても仕方ないじゃん」
「うん……」
「付き合い始めた日、叶衣が泣きながら電話してきてさ。蓮に酷いこと言われたって」
「うん」
「俺のこと庇って、怒鳴ったって」
「……そう」
「叶衣は俺のこと好きとは言わなかったけど、俺に好きな子ができるのは嫌だって言ったから……」
「それ、好きって言ってるじゃん」
「うん。そう解釈したから、もう友達でいるとか無理だった」
「そっ……か」
律は、情景が見えて何度か頷いた。ソファーに体を預けたまま、天井を見上げた。
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