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「だって、友達なら付き合うことも結婚も断ったとしても傷付かないけど、相手が本気ならひどく傷付けることになるから。それが同情でも情に流されることもある」
律の目の前がチカチカと眩しく見えた。頭がクラクラとした。
もしも曽根睦月がまだ千愛希のことが好きだとして……よりを戻したいと懇願したりしたら……。
『律は私のこと好きじゃないでしょ? でも睦月は……私じゃなきゃダメだから』
そんなふうに千愛希が言い出したら?
「律?」
「え? あ……うん」
柄にもなく動揺している律。こんな律の声は初めて聞く、と璃空は口元を緩めた。
「結婚に関しては、俺が強引に話を進めた部分もある。多分、蓮はまだ叶衣のこと好きだからさ」
「うん。そうだと思う……」
「結婚なんて女だけが騒ぐものだと思ってたけど違うじゃん。法的に自分のものになる」
璃空が淡々とそんなことをいうものだから、律ははっと息を止めた。
「法律下に置いたら、俺達の方が強い」
「璃空……」
「狡いことをしたなんて思ってない。叶衣を縛るつもりもないよ。でも、大半の男は諦めてくれる。変な期待をするようなヤツも減る。今回、結婚のメリットとデメリットを考えたけど、俺にとってデメリットは見つからなかった」
メリットしかない結婚なら、するしかないだろうなと律は肩をすくめた。
「半端な気持ちで結婚決めたわけじゃなくて安心した」
「うん。時期なんて関係ないよ。今まで結婚を意識したことがないなら視野に入れてみたら? 解決できることがあるかもしれない」
ちゃんとした相談をしたわけでもないのに、璃空は穏やかな口調でそう言った。まるで、律の悩みがわかるかのように。
「そうだね……まぁ、今はなんとも言えないけど」
「こっちも式とか入籍日とか決まったらまた連絡する」
切り上げようとしている璃空に返事をし、律は電話を切った。
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