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「それで……新年会も兼ねるからさ、土浦も来いよ。たまには……」
睦月はそう言って千愛希を誘った。千愛希のこんなに無邪気な顔を見るのは実に久しぶりだった。
「新年会ったって後数日で2月ですよ。まぁ、今月は会社全体の新年会もありましたしね。先月は忘年会。皆さんがそんなに遊んでていいんですか?」
毎月毎月飲み歩いて、なんて言葉が聞こえてきそうな千愛希の顔。眉を下げて尚、おかしそうに肩を揺らしている。
「い、いいんだって! これも仕事の一環だよ。龍之介も仁も帰ってきてるし」
その言葉に千愛希は数回頷いた。静岡に本社を構える自社は、現在全国的にも名前が知れるようになった。
それまでは、東京でそれぞれ技術を磨いてきた5人。地元でやろう、そう声を挙げたのは誰だったかも思い出せないが、静岡でやっていくと決めたのだ。
けれど当然大きな制作会社は東京で活躍している。多くの優秀な人材も揃っている。同業者や取り引き先との会食や営業は東京で行われることが多く、副社長の本間龍之介と青木仁が主に担っていた。
時には部下達を出張で行かせることもあったが、行動力のある2人が率先して動くことで経営も波に乗ったのだ。
長い期間になれば数週間戻ってこないこともある。家庭もちの2人が今月やっと帰社するということで大崎も睦月ももう1人の経営者である新井真琴も全員で集まれるのを楽しみにしているのだ。
「2人も土浦に会いたがってる」
そう言われてしまえば、千愛希も頷くしかなかった。散々部下としても友人の彼女としてもよくしてもらった身だ。たまには挨拶もしなければ失礼よね、と千愛希は思うのだった。
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