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まだ当時は友人同士だった2人。妻にも奏を会わせてやることができ、律には本当に世話になった。仕事の話も進んだし、知能指数の高い律との会話は大崎も単純に楽しめた。
その2人が付き合い始めたと千愛希から聞いて、大崎は嬉しかった。睦月と別れたばかりの頃、千愛希は気丈に振舞ってはいたが切なそうだった。
大崎も結婚するものだとばかり思っていたものだからなんて声をかけていいかもわからなかった。それが律と付き合い初めてからまた明るくなった気がしたのだ。ようやく次の恋愛に目を向けられたんだと安堵した。
「守屋くんとは順調?」
「まぁ……順調もなにも友達の延長みたいなものですけど」
そう言いながらも、頬を染めていた千愛希の顔を思い出した。あの2人は一緒にいる方がいい。器用でありながら恋愛には不器用そうな2人が、しっかり意思疎通を図れるようになるまで時間がかかるだろうと大崎には思えた。
他人が下手に世話を焼いたりするより、時間をかけて歩み寄っていく方が絆も深まるだろうと大崎も暖かく見守ってきたのだ。
そこへきて、友人の睦月から「別れなきゃよかった」だなんて言葉は聞きたくなかった。
「千愛希が……寂しそうな顔するんだ」
「……は?」
「彼とは会ったよ。会えて千愛希も嬉しそうだった。でも、なんか……」
「わかるよ。2人の空気感はちょっと他とは違う。でも、ただそれだけだ。お互いそれでいいとして付き合ってる」
「わかるけど、千愛希が遊ばれたりしてるんじゃないかって」
睦月の言葉に大崎は軽く息をつき、「守屋くんは仕事を紹介してもらった関係で一度食事をしたけど、常識のあるいい子だったよ。軽率な行動をするような子じゃない。任せて大丈夫だろう」と言った。
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