視線の先

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「土浦さんに不備はないですよ。俺は凄く満足しています。広告効果がいまいち発揮できなかったのは、単に俺の製作したゲームが面白くなかったからでしょうね」  彼は爽やかな笑顔でそう言った。東京の一流大学を卒業後、製作会社に就職しノウハウを取得した大崎。大学時代に仲の良かった友人と、起業を考えていると話題になった。  それなりに職場で実績を積み、出世街道まっしぐらな男が大崎を含め5人集まった。  資金は大崎が1番多く出すからということで、名前は大崎が社長を名乗っているが実際は友人同士の共同経営であった。  大崎は女性人気の高いサッカー選手に似ていた。スーツが似合う好青年で、千愛希は初めて大崎と会った時、イケメン社長じゃモテて大変だろうなと心の中で呟いた。 「もったいないお言葉です。本当に私の力及ばず申し訳ございませんでした」  仕事が失敗に終わった時、優しい大崎の言葉に更に申し訳なさが募り、千愛希は泣きながら謝罪をした。 「謝らないで下さい。俺は満足してるって言ってるでしょう。あのホームページ、色々工夫されてて正直ビックリしましたよ。依頼してからの仕上がりも早いし、知識も豊富だし。あれって土浦さんのアイディアでしょ?  プログラミングが得意なら、代理店じゃなくて製作側になったらいいのに。土浦さんがアプリ開発なんかしたらきっといいもの作れるんだろうな」  千愛希の才能にいち早く気付いたのは大崎だった。  千愛希と打ち合わせをする中で、千愛希がプログラミングを得意とすること、人並み以上の知識と技術を持っていることを見抜いていた。そして本人がちっとも仕事を楽しいと思っていないことも。
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