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律は事務所のパソコン画面を横目に、ふっと穏やかに微笑んだ。
「それでね、そんなことがあったから言うの遅くなっちゃったの! 色々してくれたのに報告遅くなっちゃってごめんね!」
必死に弁解しようとしている叶衣が可愛く思えた。昨日は璃空と電話をし、叶衣との結婚について報告を受けた。更に、少しだけ律の悩みに触れてみたり。
そんな璃空から叶衣に連絡がいったのだ。叶衣は、仕事のことでも協力してもらったのに、璃空と付き合い始めたことすら報告していなかったことを申し訳なく思った。てっきり親友同士の璃空と律はそのことも承知していると思っていた叶衣。
頻繁に他人と連絡を取りたがらない璃空が、わざわざ律に連絡しているはずもなく今日までに至ったそうだ。
『前に担当した刑事事件の資料が残っていたら参考にさせて欲しい』と同僚から頼まれていた資料を整理するために1人で残業していた律のもとに、叶衣の方から連絡を寄越した。
「まぁ、いい報告だったわけだし。それならいいよ。蓮の時は、俺も璃空から連絡があって驚いたけど……」
「う、うん……。蓮ちゃんと七海のことはまだモヤモヤするけど、私が璃空といたいと思って」
叶衣の言葉に、律はなんとなくいいなぁ……と思った。璃空も叶衣も、お互いがいないところでも「一緒にいたい」と言えるのだ。自分の気持ちと向き合い、自分に素直になった証のような気がした。
俺は千愛希とどうしたいんだろう……。そんなふうに律はふと思う。
「蓮のことは完全に吹っ切れたの?」
「恋愛感情はもうないよ。もう、璃空だけ」
その言葉に律はすっと瞼を開けた。
千愛希からそんな言葉が聞けたらな……。そう思ったのは無意識だ。
「そう……」
「私ももっと早く気付く要素はあったんだよ。七海が髪型変えたりさ」
「……髪型?」
律は不思議そうに首を捻った。
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