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「とりあえず見守ってなよ。まだ昨日の今日でしょ。1週間待っても2人に変化が起きなきゃなんとかするから」
「1週間……」
「わかった? 余計なことしないでよ、2人の問題なんだから。もう俺達にできることなんかないからね」
そこまで言えば、ようやく響は「う……」と言葉を失って「わかった……」と大人しく電話を切った。
昨日の傷付いた詩の背中を見つめたまま、ため息をついた律。せっかく頼んだ料理も手に付けず、持ち帰らせてもらうことにした。
自分と千愛希のことだってモヤモヤしてるというのに、他人の世話なんて焼いてる暇ないんだけど……。そう思ったことは誰も知らない秘密だ。
持ち帰った料理で夕飯を済ませた律のもとにかかってきた璃空の電話で、おめでたいと思う反面、千愛希に対するモヤモヤが大きくなった。
今日、叶衣と話をすれば、千愛希への恋愛感情に気付かされることになった。
正直もう、詩のことに構っている場合じゃない。自分のやるべきことはやったし、他人がどれだけ足掻いても、結局のところは当人達がなんとかするしかないのだ。
「俺も言わなきゃだよなぁ……」
律はまたデスクに伏せって、重たい息を吐いた。好きだと気付いた以上言わないわけにもいかない。睦月に奪われるわけにはいかない、と今すべきことは頭にある。
ただ、スマートフォンを手に取って電話帳を開くと、手が震えた。
なんて言えばいい? とりあえず会うとして日曜日会える? って聞けば……いや、いつもの喫茶店で告白とか無理だよ。誰が聞いてるかわかんないし。だったら家? 家に誘うの? もし周が来てたりしたら、からかわれるかもしれないし……俺が? 周に? いや、ないない。ないないないない。そんな屈辱耐えられない。
律はまたしてもため息をつく。ずっと口から空気が出っぱなしだ。
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