10339人が本棚に入れています
本棚に追加
「律?」
「あ、あぁ……ごめん、上がって」
思わず魅了されていたなどとは言えない律は、慌ててスリッパを出した。
「実は、今日周が」
そう律が切り出したところで「あ、千愛希さん来たー?」とパタパタと足音を鳴らしながら周が顔を出した。
「え……?」
「こんにちは、千愛希ちゃん」
周の後ろからひょっこり顔を出したまどか。千愛希はそっと息を飲んで、目を大きく見開いた。
なんで……来るのは明日だって言ったじゃん。
そう思った千愛希だったが、直ぐにパッと笑顔を作って「あー! まどかさん、まどかさん! 今日もお綺麗です、まどかさん!」と声を張り上げた。
目一杯嬉しいことをアピールするかのように、その場でパタパタを足踏みまでする。
一見いつも通りに見える千愛希に、律はふうっと軽く息をついたが、千愛希の姿を目にした周とまどかはその場で硬直した。
「え……どちら様で」
周がそう発するが、まどかを見た時の反応は千愛希そのもので戸惑いを隠せない。
「千愛希ちゃん、髪型変えたんだ。メイクも違うね」
女性のまどかは、直ぐに千愛希のどこが違うかに気付く。
「ええ、そうなんです。思い切って変えてみました」
歯を出して笑った千愛希。その美しい笑顔に、まどかと周までもが目を奪われた。
「な、なんか……女優さんみたい」
知らない人物を見るかのように、まどかに擦り寄り警戒する周。
「うん……なんか……怖いくらい綺麗だね」
まどかは周にだけ聞こえる声でそう呟いた。
リビングに通された千愛希。ソファーに座ると、その隣に早速ストンと腰を下ろした周。
「ねぇねぇ、千愛希さん。パソコン重くなっちゃって動き悪いんだよ。ちょっと見てくれない?」
そう言って膝の上に乗せたノートパソコンを開いた。また千愛希が来た時にでも見てもらおうと一応持ってきていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!