変化の理由

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 なんか……この人、会う度に綺麗になってる気がする。  周はパソコン画面に視線を戻しながらそんなことを思った。今までまどか以外の女性を美しいと思ったことはなかった。誰よりもまどかが1番綺麗で、1番可愛かった。それは揺るがなかったはず。  それなのに、少しだけ戸惑うほど千愛希は綺麗な顔で笑った。  そんな周の反応を見て、律はぎゅっときつく拳を握った。いくら周がまどかを溺愛しているとわかっていても、一瞬だって千愛希のことを綺麗だと思ってほしくなかった。  千愛希の魅力は自分だけが知っていて、他の男には見えなければいいのに、そんなことさえも思う。 「今データ処理してるからちょっと待っててね。時間かかりそうだよ」 「うん。待てる、大丈夫」  穏やかに2人が会話をする中、「千愛希ちゃん、コーヒーでいい?」とまどかが少し大きな声で尋ねた。 「はい! まどかさんが淹れて下さるんですか! そのカップはいただけますか!?」  勢いよくまどかの方を振り返った千愛希。つい、いつもの調子で話してしまう。自分のせいで空気を悪くしてはいけない。そんな気持ちが先頭に立って、いつも以上のまどか愛が顔を出す。 「カップは置いてってよー。ちゃんと洗うから。律くんと同じブラックでいいんだよね?」 「はい! カップくれないって」  隣の周にしょんぼりした顔で言う千愛希。周はクスクス笑って「俺も言ったことあるけど断られました」と言った。  おかしな発言をする千愛希を見ると、周は安堵する。『まどかさんのことを好きないつも通りの千愛希さん』が絶対的な恋愛対象外に導いてくれる。
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