プロローグ

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8b4cd6bf-25df-458d-8485-860524f12198  千愛希(ちあき)には付き合って1年になる彼氏がいる。彼は彼女と付き合う時に言った。 「千愛希のことは人間として好き。だから一緒にいることにした」  彼は私のことを人として好きだと言う。そこに恋愛感情は含まれていない。  なぜなら彼は、別の(ひと)を見ているから。好きになってはいけない人を。  私は彼女の代わり。千愛希はこのところずっとそんなことを考えている。  千愛希には恋愛感情というものがわからなった。ただ彼が、(りつ)が『人間として好き』そう言ってくれたあの言葉があの時の彼女にはとても嬉しいものだった。  尊敬、信頼、自由、尊重。2人の間に存在するもの。唯一ないのは恋愛感情だけ。  2人にはその関係が心地よかった。  始まった時もそこに疑問は抱かなかった。  あの時の私は、それでよかったはずなのに。  恋愛感情なんて、知らなければよかったーー  雨に濡れた窓を見ながら、千愛希は憂鬱そうにため息をついた。
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