視線の先

18/24
前へ
/390ページ
次へ
 元々簡単なアプリなら製作できた千愛希。大崎の元で学ぶ内に、知識も技術も面白い程成長を遂げた。 「女性向けのアプリが中々作れなくてね……色々試みたんだが、どうにも上手くいかない。そもそも女性はアプリゲームなんかしないんだろうか」 「そんなことはありませんよ! うーん、そうですね。王道なのはやっぱり乙女ゲームですかね。イケメンがいっぱい出てくるような」 「乙女ゲームな。そうなると、シナリオ作成する人材がまた必要だ。キャラの設定も……」 「社長、私がちょっと考えてみてもいいですか?」 「ああ、もちろん。アイディアを出してくれたら助かるよ。必要経費なら俺が出すから、好きにやってくれていい」  なぜか大崎には根拠のない自信があった。千愛希なら素晴らしいアプリ製作ができるだろうと。そのためなら、経費は惜しまなかった。  前職では会社から全く期待されていなかった千愛希。大崎からの絶対的な信頼を得た気がして、心底嬉しかった。この人のために何か結果を残したい。そう思ったのだった。  睡眠時間さえも削ってシナリオを考えたのは他でもない千愛希だ。キャラ設定から製作まで3年かけてようやく完成させたアプリゲーム。無名のイラストレーターを大崎が探してきてくれ、順調に配信が開始された。  千愛希は女性が求める乙女ゲームを、アンケートで多数意見を集め、可能な限りそれを形にした。  有名な声優が担当するボイス付き。あやかしが人間に扮して普段は共に生活しているが、ひょんなことから主人公となるプレイヤーに真の姿を知られてしまう。  そこからルート選択ができ、秘密にしてほしいとお願いするわんこ系男子との恋。反対に主人公の秘密を握られ、契約を結ばされる意地悪男子との恋。また、口封じのため館に監禁されてしまう大人向けルートまで。  幅広い年齢層の女性が好みのルートを選択できるようになっていた。一部課金でアバターを可愛く変更でき、特別シナリオの購入もできた。   それが爆発的に人気となり、千愛希は一躍人気クリエイターとなった。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10255人が本棚に入れています
本棚に追加