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その頃、周とまどかはキッチンで買い物してきたものを仕分けしていた。夕飯用に買ってきたものはキッチンに、明日の朝ご飯用は冷蔵庫。日用品は収納庫へ。
「結構買ったね」
「でもこれだけ買ってあれば大丈夫でしょ」
周はまどかに笑顔を向ける。専業主婦のダリアは、家のことを全てやりながら認知症の祖母のこともみている。膝の悪い祖母は長距離を歩くのは困難で、かといって置いて買い物へ行くわけにもいかない。
簡単なものなら車椅子で移動して一緒に買い物へ行くこともあったが、多くの日用品を買いに行くのは骨が折れる。だからこうして時々律や周が買い出しに行くのだ。
今回は、「ちょうど土曜日に行くからいる物あったら買っていくよ」と周が言ったことから大量の買い物袋を下げて実家にやってきた。
「先に作ってようかな。ダリアさん、まだ洗濯物畳んでるよね?」
「うん。さっき2階にいたから。俺も手伝うね」
結婚前から義母と良好な関係を築いていたまどかは、未だに『お義母さん』と呼ぶことに慣れない。時々癖で名前呼びが顔を出す。
穏やかな雰囲気で夕飯作りに取りかかる2人。
「あ、千愛希さんきっとご飯食べてくよね?」
「どうだろう。千愛希ちゃんも忙しいからね」
「俺、聞いてこようかな」
「いいよ、いいよ。やめておきなって。ちょっと多めに作って食べてくって言ったら出せばいいじゃん」
「なんで?」
小首を傾げる周に、まどかは眉を下げた。野菜を洗いながら「普段お互いに忙しくて会えないんだから、せっかく会えた時くらいそっとしといてあげなよ。さっき怒られたばかりでしょ」と苦笑する。
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