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周は目を丸くさせた後、しょんぼりと項垂れて「ごめんね、まどかさん。俺、凄い軽率なことしたよね」と言った。
「そう思うなら後で律くんに謝っておきなよ」
「え? 律? なんで?」
「なんでって……千愛希ちゃんに触ろうとしたりするから律くん怒ったんでしょ。そりゃ、怒るよ」
まどかは呆れた、と言ったように大きく息をついた。そんなまどかを見て周は怪訝な顔をする。
「違うよ。律は俺がまどかさんがいながら別の女性に触れようとしたから怒ったわけで」
「あまねくん、そんなわけないでしょ。じゃあ、あまねくんは律くんが私に触っても怒らないの?」
「そんなの怒るに決まってるじゃん! まどかさんは俺の奥さんだよ!」
周はカッとムキになる。
まどかは大根を適当な大きさに切りながら「そうでしょ。律くんだって同じだよ。千愛希ちゃんは律くんの彼女なんだから」と言った。
「あ……うん。そうか……」
周は一瞬大きく瞳を揺らしたが、直ぐに軽く頷いた。
「そうだよね……。なんか、いつも律って冷静だから俺みたいに簡単に取り乱したりしないと思ってたから……」
「ね。いつも冷静な律くんがあんなに怒るんだから、相当千愛希ちゃんのこと大切なんだろうね」
「あー……そっかぁ……。俺、ダメだなぁ。律があんな言い方したから、てっきりまどかさんのことを思ってだと思った」
周は、その場にしゃがみ込んで腕を伸ばしたまま両膝に乗せると、顔を伏せて大きなため息をついた。
「考えてもみなよ。律くんだよ? 正論はずばっと言うけど、照れくさいことは誤魔化すじゃない」
「確かに……それが律だ」
まどかは視線を落とし、頬を緩めると「だからちゃんと律くんに謝りなね」と言った。
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