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「あまねくんが他の女の子に触ったり、可愛いって思うのは嫌だよ。これからも私だけ見ててほしいって思う」
「うん……」
「でも、律くんが選んだ人を素直に素敵な女性だって認めることは大切だと思う。だってもしかしたら私達のお義姉さんになる人かもしれないよ?」
まどかは、上目がちに口角を上げて周を見つめた。周は咄嗟にぎゅっとまどかを抱きしめた。
「わぁっ、危ないよ!」
包丁を持っていたまどかは、慌ててそれをまな板の上に置く。
「ねぇ、まどかさん」
「うん?」
「やっぱり俺、まどかさんしか好きじゃない。今、凄く好きだって思った」
「あまねくん?」
「そういう寛大なところも、俺の兄妹を大事にしてくれるところも、全部好き」
「私も……あまねくんのこと、全部好き」
「俺がずっとずっと、まどかさんのこと守るからね」
「うん。それは結婚前からの約束」
軽くコツンと額同士をくっ付けて、クスクスと柔らかく笑い合う。それからどちらからともなく唇を重ねた。
「俺、千愛希さんのことは既にお義姉さんみたいだって思ってるのかも。だって、まどかさんに初めて触れる時、好き過ぎて緊張で手が震えたもん。そう考えたら、千愛希さんに対しては全くない。全然緊張しない」
「ねぇ、本当に律くんに怒られるよ」
真顔で失言をする周に、目を細めたまどか。
「ははっ、律もきっと千愛希さんとこうやってイチャイチャしたかったんだよね……俺、最初からずっと邪魔しちゃった」
「先に今日行くって律くんにも一言言っておけばよかったね」
「うん。次からはそうしよう」
「うん、そうしよう」
2人は固く頷いて、夕食作りを再開させた。
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