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千愛希は、律の祖母と2時間ほど会話をしながら時々猫と遊んだ。千愛希が持ってきたおもちゃを気に入ったのか、追いかけては前足を伸ばす猫。
しっぽを含めない全長50cmほどの大きさをした猫は、祖母が甲斐甲斐しく餌を与えていたせいかまるっと太っていた。それにもかかわらず、俊敏な動きで猫じゃらしを追いかける。
千愛希は大声を上げて笑い、楽しそうに手を叩いた。すっかり和んだ空気に、律は疲れて寝入ってしまった妃茉莉をあぐらをかいた足の上に横たわらせたまま優しい眼差しで千愛希を見つめた。
未だ猫の名前が決まらないのか、「猫ちゃん」と呼びながら猫じゃらしを振っている千愛希。
笑い疲れたのか、時々「はーっ」と腹の底から声を漏らす。
動物が好きなら、2人で色んな動物と触れ合える場所に行ってみるのもいいか、なんて律は思う。いつもいつも喫茶店ばかりで代わり映えのない休日だから。もっと千愛希が行きたい所に連れて行ってやりたいと思った。
「ねぇ、律は猫好き?」
「んー、普通」
「じゃあ、犬と猫とどっちが好き?」
「どうだろう。どちらでも」
「なにそれ。どっちかくらいあるでしょ」
そんな他愛もないやり取りをしているところで、祖母が「ちょっと御手洗に行ってくるよ」と立ち上がった。
「おばあちゃん、1人で平気?」
律は心配そうに首を傾げる。
「大丈夫だよ。ありがとうね、りっちゃん」
そっと律の頭を撫でてから祖母は奥へと入っていった。
「すごい……おばあちゃん、律のこと子供扱いだ」
「おばあちゃんにとってはずっと子供のままなんだろうね。俺、もう30過ぎてるのに」
律はそう言いながらも肩を揺らして笑う。はにかんだ顔が、『おばあちゃん大好き』と言っているようで、千愛希も心なしか子供を見ているような気分になった。
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