視線の先

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「ねぇ千愛希。両親への挨拶のことだけどさ」 「あ! そうだね! そうだよね。どこにしようか」  そう言ってスケジュール帳を開いた千愛希。社長の秘書も兼任しているため、スケジュールはぎっしりである。  前回も顔合わせを予定していた日に打ち合わせが入り、延期となったのだ。そろそろちゃんと場を作らねばと千愛希も考えていた。 「どこ空いてる?」  確認するも両家の両親との都合が合わない。 「土日無理なの?」 「社長の会食があって、そこの送迎をしなきゃなんだよね……」 「それなら俺から拓也に言うよ。そこまで理解のないやつじゃない」 「う、うん。じゃあお願いしようかな。睦月のご両親に会うの、楽しみ」 「俺も……顔合わせ楽しみだよ」  そんな会話をしていたにも関わらず、その前日にアプリのシステムエラーが起こり、千愛希は会社に呼ばれた。問題解決のために睦月と一緒になって徹夜で作業した。  それでも顔合わせには遅刻していった。 「遅くなって申し訳ありません!」  千愛希と睦月は両家に謝罪し、表向きは穏やかに見えたが、睦月の両親は帰宅後いい顔をしなかった。 「睦月……千愛希さんが優秀な方なのはわかるが、結婚してもこんな生活を続けるつもりか? 今の地位を手放す気はないんだろう?」 「こんなことで孫は望めるのかしら? 千愛希さん、いつまでお仕事続けるつもりなの?」  両親にそう言われた睦月は、後日千愛希ともう一度話し合いの場を設けた。
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