視線の先

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視線の先

 60インチの大画面に映し出された鮮明な映像。その目の前でソファーに腰掛けた律と千愛希は、コントローラーを持って無表情で画面を見ていた。  正方形をいくつか組み合わせてできた様々な形をしたブロックを、空いた隙間に入れていく。ブロックの向きは固定されており、方向は変えられないようになっていた。縦か横が埋ると消える、パズルゲームだ。  形に合うように嵌め込んでいくその様は、IQテストのそれに似ていた。  2人がゲームを始めて1時間以上が経つ。それでも一向に勝負がつかない。暫し無言が続く中、先に口を開いたのは律だった。 「あ、言い忘れてた。今日、夕食食べにまどかさんが来るんだった」 「え!?」  大きく反応した千愛希は、ばっと律の方を向く。 「あぁっ! 置くとこ間違えた!」  動揺した千愛希の手元が狂った。ただでさえHARDモードで始め、それからいくらたっても勝敗が決まらないものだから、スピードも最速に突入していた。  まどかという名前で頭がいっぱいになった千愛希は、そのままブロックの置き場を失い【lose】の文字が半画面いっぱいに浮かび上がった。 「うわ、負けた……。ちょっと、律! 今のは卑怯じゃない!?」 「卑怯? まさか。ただの日常会話だよ」  律はそう飄々と言うが、まどかという名前を聞いて千愛希が動揺することなど計算の内だ。  律が自分の画面に【winner】という文字を見るのは何度目だろうか。趣味がテレビゲームで一通りのゲームを体験している律。IQ 180を誇る律が、パズルゲームで負けるはずはない。
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