最恐の男

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 もっと早く、千愛希への想いに気付いた時に行動に移せていれば、睦月にこんな隙を与えることもなかったし、期待させることもなかった。  今回の件は、自分にも落ち度があったと律は反省した。 「私もその言葉は胸に留めておきます。今後は、私が誠心誠意をもって千愛希さんのことを幸せにします。貴方のように間違った行動を起こそうとする人間からも守ります」 「はは……それは、頼もしいです」 「世の中にはタイミングというものがあります。私は運がよかったのでしょうね。もう少し気付くのが遅ければ、私も千愛希さんを失っていたことでしょう。彼女のことを本気で好きだという気持ちは理解できますよ。ただ、どうにもならないこともありますから。彼女への未練を振り切って別のことに目を向けられるよう願っています」  律の言葉は穏やかだが、内容は実に刺々しく早く千愛希のことは忘れろと言っていた。 「守屋さんは……今回のことを土浦さんに黙っていることは心苦しくないんですか?」 「もちろん後ろめたさも罪悪感もありますよ。ただ、彼女にとっての最善を考えた結果がこれだったのです。彼女は全ての責任は自分にあるのではないかと自分を責めかねないので。私達が揉めていることも彼女にとっては辛いものでしょうから」 「それは……そうかもしれませんね」 「ええ。それでは私は先に失礼します」  律は話を切り上げて、氷の溶けて層になった烏龍茶をコクコクと数度飲み込んだ。アルコールも頼まず、せっかく出された飲み物に手を付けないのも店に申し訳ないと思ったのだ。
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