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千愛希への盗撮、律が行った盗聴にクラッキング。諸々を聞いた璃空は言葉を失っていた。
暫くしてから「聞きたくなかった……」と璃空が絶句した。
「1人で抱え込むには重すぎてね。彼女に言うわけにもいかないし」
「そりゃそうだろうね。知らない方がいいこともある。ただ、弁護士が法を侵してりゃ世話ないよ」
「だから誰にも言えないんだって」
「だったら俺にも言わずに墓場まで持ってってよ。俺にだって荷が重いよ、そんなの共有するの」
「まあまあ。弁護士の璃空だから言ったんじゃん。口は固いだろうし」
「口が固いもなにも、保身のためにも誰にも言えないって。……珍しいな、律がそこまでするなんて。他人のためにリスクを負うなんて1番嫌いじゃなかった?」
璃空は心底驚いていた。自分も他人にはてんで関心などなかったが、律だって似たようなものだった。ただ、家族や友人に対してだけは璃空よりも気にかけてやる素振りがみられたが、自ら法を侵すのは何があってもありえないことだった。
「彼女を傷付けずに解決するには警察を介入させるわけにはいかなかったんだよ。介入したところで証拠がなければ取り合ってももらえないだろえしね」
「まぁ……例え彼女が被害届けを出したとしても直接害を被らなきゃストッキングの件も動画の件も表に出ることはなかっただろうね」
「そういうこと。1日でも遅れたらあのパソコンにデータは残ってなかっただろうし、千愛希も俺も何も知らずに日常を送ってたはずだよ。それで味をしめたら困るでしょ。早めに手を打っておかないと」
「早めにね……」
璃空は電話の向こう側で、うーんと唸っていた。
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