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週末、守屋家で鍋パーティーが行われた。前回カニ鍋に誘われたのだが、その場にいてもたってもいられずに守屋家を後にした千愛希。家族全員を含めて鍋をしようと提案したのは周だった。
律は本意ではない、そう思いながらも千愛希のために周に連絡を入れたのだった。自分勝手に周に嫉妬し八つ当たりまでした手前、電話をかけるのは気が重かった。
ただ、周にしてみればもともと律に愛想がないのはいつものことで、仕事で嫌なことでもあれば不機嫌なのも普段通り。まさか千愛希のことであらぬ誤解をされているだなんて思ってもいない周は、そんなことすらケロリと忘れていた。
理不尽な兄の八つ当たりに巻き込まれることは、弟の宿命だくらいに思っている周は、律の気まずさを打ち消すかのように明るい声色で電話に出た。
「律ー? どうかしたの?」
仕事の後だろうになぜこんなにも元気なのかと律の方が顔をしかめた。
「千愛希がまたまどかさんに会いたがってるから、今度いつ家に来るか確認しようと思って」
「ああ、千愛希さんね! 俺もあれからパソコンの調子よくてお礼言いたいと思ってたんだよね。それなら今週でよくない?」
「今週!?」
「なに? 用事あるの? どうせいつも千愛希さんとコーヒー飲みに行くんだから土日のどっちかは空いてるんでしょ?」
「まぁ……多分」
律はそろっと視線を横に逸らして、千愛希の顔を思い出す。周とまどかに会わせることなど今までなんとも思わなかったのに、今週と聞けばそんなに早く!? と心の準備が整わない。
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