初恋

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 その辺にいる女性と変わらないと思っていたのに、なにもかも律の期待を裏切るまどか。全てが想像と違い、予想外の発言をしたりする。  芯はしっかりしているのに時々無防備で危なっかしくて、それでいて優しい。周が実際にまどかと出会って更に夢中になった理由がわかった気がした。  どんなに困難な障害があっても、周と一緒にいることだけは諦めない。体調が悪くなっても、精神的にダメージを負っても、周の傍からは離れようとしない。  そこまで想われる周はどんな気持ちだろうか……不意にそんなふうに思った。  狂気に満ちた愛情を向けられたことは律にもあった。ストーカーまがいのことをされたり、物を盗まれたり。恐ろしいほどに執着されたこともあった。けれどそれはいつだって一方的で、決して律の気持ちなんて考えたりしない。  自分が好きだから相手を求めるだけで、律がどんな思いでその苦痛に耐えているか知りもしない。  しかし、周とまどかは違った。お互いがお互いのことを思いやり、その中で相手を強く求め合っているのだ。だからこそ成り立つ愛情。  周にはとことん甘え、感情を剥き出しにし、子供のように泣いたりする。  今まで生きてきて、女性に恋愛感情を抱いたことなどなかった律。子供の頃から異性はとても自分勝手で好きの押し売りをしてくる相手だった。  その好意を利用して、いろんな害から逃れてきた。女性は自分のためなら他人を蹴落とすことをなんとも思わないそんな生物。きゃあきゃあとうるさくて、自分本位で恋愛にしか興味のない生物。  律はとにかく女性という生物が嫌いだった。
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