初恋

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 それでもまどかに関しては、雅臣の件でも自ら弁護士として動き、周のプライベートにも関与した。だから余計にまどかのことが気になっただけだと思えた。しかし、千愛希は違う。  今日まで忘れていたはずの同級生にバッタリ会ったからって、こんなふうに何回も千愛希の言葉を思い出すのはおかしいと思っていた。  律はそっと卒業アルバムを取り出した。千愛希がいたはずの高校のものだ。  クラスを1つずつ捲っていく。同じクラスにならなかったはずなのに、なんで今になって思い出したんだっけ。    そう思っているところに見つけた若かりし頃の千愛希。うっすら口角を上げている千愛希はちっとも嬉しそうじゃなかった。  けれど、その儚げな顔は現在の律が見ても美少女だと思った。  高校生のわりに大人びた顔立ち。黒目がハッキリしていて、鼻筋も通っている。この頃はまだ肩までしかない髪。前髪の分け目も今と違った。  千愛希はこの美しい容姿から、男子生徒に人気があった。しかし彼女は律を追い抜くことに必死でそんな男子達には目もくれない。  周りが皆色恋沙汰に夢中になる中、千愛希は学年1位の座に夢中だった。  律も一度や二度、千愛希が可愛いと噂されているところを耳にしたことがあった。ただ、律も恋愛には興味がなかった人間だ。そこで気に止めることもなかった。  そんなことすらも卒業アルバムの写真を見て思い出す。  あの時関わらなかった人物とまさか2時間もお茶をするなんて。律は自分の行動が不可解で、千愛希が誘ってきたことも疑問だった。  てっきり自分は千愛希に嫌われているものだと思っていたからだ。あんな笑顔で自分と向き合って話すことがあるだなんて、この頃の自分には想像もできなかっただろうなと思った。
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