異性の友情は存在する

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 千愛希はそっと下唇を噛んだが、直ぐに「わかりました。いつからですか?」と言った。  大崎はようやく安堵の息をついて「悪いな。明日から早速頼む」と言った。 「では、明日は直に向こうに出勤でよろしいでしょうか」 「ああ。睦月はその……応援はいらないって言ったんだけどな。どうにも今だけのメンバーじゃ発表した期限に間に合わない」 「ええ。わかってます。彼は、他人に力を貸すことは厭わないけど、誰かに頼るのは苦手な人ですから」  千愛希は昔のことを思い出し、ふっと口元を緩めた。千愛希の仕事をサポートしながら、自らも大きな仕事を抱えていた睦月。 「俺のことは心配しなくていい。こっちは順調に進んでるから」  そんなことを言っていた睦月だったが、ほとんど毎日睡眠を取らずに働いていたことを睦月の部下から聞いて知った千愛希。  そんな切羽詰まった状態なら自分の仕事にだけ集中すればよかったのに。そうは思うものの、千愛希の方も睦月がいなければどうにも動きが取れなかった。  睦月の部下にも優秀な者は多いが、睦月や他の共同経営者に比べれば腕は劣る。結局は睦月自身が率先して動くしかなかった。  千愛希の言葉に大崎も優しい笑みを浮かべた。 「ありがとうな。そう言ってくれて助かる。本当に……睦月の側に土浦がいてくれたらよかったのに……」  さらっとそんなことを言ってしまい、大崎はしまったと慌てて口をつぐんだ。千愛希は、ふっと微笑み「すみません。大切な友人を大事にしてあげられなくて」と嫌味を言ってのけた。
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