異性の友情は存在する

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「俺もあんまり結婚には興味がなくてここまできたし」  なるほど、だから彼女もいないのね、と千愛希は思った。 「子供がほしくて産むならいいけど、そうじゃないなら生まれてきた子が不憫だと思うよ。そりゃ親は孫の顔見たさに結婚して子供を産めなんていうけど、実際に育てるのは産みの親なわけだし」 「うん、本当そう思う。正直今の仕事がいつ落ち着くかなんてわかんないの。私はね、私にしかできないことがしたいの。皆が当たり前にしていることには興味がないんだ」  そこまで正直に胸の内を話したのは律が初めてだった。他の人にこんなことを言えば、能力自慢と取られて嫌な顔をされることなどわかりきっている。しかし、律なら自ら優れた頭脳を持ち、嫉妬される側にいた人間として話しても平気な気がした。 「そう。仕事、好きなんだ?」 「うん。今ね、アプリを作ってるの」 「へぇ?」  律はそれからも千愛希の話を聞いてくれた。ずっとシステムエンジニアになりたかったが、今はアプリ制作の方が興味があって成功したことも、今後も同じくらいその仕事に尽力したいことも。 「やりたいことなんて見つからない人間の方が圧倒的に多いんだよ。だから結婚するって人もいるくらい。そう考えたら、土浦さんがやりたいことに向き合えてること自体誰にでもできることじゃないと思う」  律は1つも千愛希のことを否定したりしなかった。千愛希はすぐに律のことが大好きになった。もちろん、友人として。
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