異性の友情は存在する

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 千愛希は反対に律の話も興味深く聞いた。周りに弁護士という職種に就いている友人はおらず、イメージでしかなかった。  もちろん、大人向けのアプリを制作するにあたり児童福祉法、風営法、青少年保護育成条例や迷惑防止条例等を侵害していないか配信前に弁護士を入れることはある。  けれどそれはあくまでも仕事上のやり取りであって雑談の中で過去の事件や案件に触れることはない。だから律との会話はとても新鮮だった。  優秀な弁護士である律は、個人情報の漏洩に気を遣い、口外してはいけない案件については決して口を割らなかったが、その他の仕事内容については千愛希が質問すればいくらでも答えてくれた。  律から自慢気に大きな仕事について触れることは一度もなかった。  そんな『自らは話したがらないが、聞けば答えてくれる』というやり取りが千愛希はとても楽だった。聞きたい話は聞けるし、面倒な愚痴は聞かなくていい。反対にぶちまけたい愚痴があればちゃんと聞いてくれて、否定はしない。  千愛希にとっては最高の友人である。  律と再会して数ヵ月が経った頃、偶然周とまどかのデート現場に遭遇した。律と千愛希が食事を終えたところに入店してきたのだ。  高校の時に周を見たことがあったが、大人になった彼は印象が変わっていた。すっかり大人びて可愛いよりもカッコいいが勝るように思えた。  兄弟といっても律とは雰囲気も性格も異なる。どちらも優劣がつけられないほどの美形には変わりないが、個別に見たら兄弟だと気付かないほどであった。  そんな長身の周の後ろに隠れていたまどかの存在に気付いた千愛希は、今までにないくらい感激し涙を流して喜んだ。
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