異性の友情は存在する

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 向かい合って食事を摂ることになった周達の姿をじっと見つめていた千愛希。甘いものが嫌いなくせに、まどかを引き留めていたくてパンケーキを注文してしまったり、名前を呼ばれただけで号泣したり。  律はそんな千愛希の姿にぎょっとした。律の中でも千愛希の印象がガラリと変わったのだ。  再会したばかりの頃は、知的で探求心があって仕事に対して真面目。けれどさらりと失礼なことを言ってのける。普通に仕事に悩んで普通に恋愛に悩む、いわるゆる普通の女性だと思っていた。  それが蓋を開けてみたら周以上にまどかの熱狂的なファンだった。その熱量はすさまじく、律もまどかも圧倒されるほど。  しかし、周と千愛希がすっかり意気投合している姿にも律は驚かされた。  周は律とは違いとても社交的で誰に対しても明るく優しい。嫌いな相手に対してだけはその感情をむき出しにするような子供っぽいところはあるが、基本的には誰とでも仲良くなれるような性格だ。  しかし、まどかと付き合うようになってから、まどか以外の女性とはかなり距離をおいて話すようにしていたはず。周自身も律同様異性から好意を抱かれやすいことは承知している。まどかにあらぬ誤解を抱かれぬよう、決してまどかが不安にならないよう周なりに配慮していたのだ。  それがどういうわけだか千愛希とは以前から知り合いだったんじゃないかと疑うほどに、周が家族に見せるような自然な笑顔を向けた。  珍しい……周があんなに笑うなんて……。そんなに同調してくれる相手ができて嬉しいのか?  律は軽く首を捻る。  周は同じまどかファンとしてファントークを楽しむのは千愛希が初めてだった。更に、自分だけが知っているまどかの魅力についても嬉しそうに語った。  いつの間にか、律とまどかの前を楽しそうに話しながら歩く周と千愛希。  その背格好はまどかにそっくりで、いつもの光景にも見えた。しかし、隣には当然本物のまどかの姿。
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