異性の友情は存在する

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 周のすぐ側で自然にまどかと並んで歩く。隣のまどかは妊娠してから踵の高い靴を履かなくなった。身長が170cm近くあるまどかだが、律と並べば小さく見える。中々横並びになる機会などない律は、身長すらも千愛希と同じくらいか、と思った。  それでも目の前の楽しそうな周と千愛希の姿に目を細め、「なんだか嫌味のない子だね」と自然に話しかけてくるまどかを横目に、このままパートナーが変わってしまっても差し支えないんじゃないかとすら思えた。  あんなにも周と千愛希は楽しそうで、まどかもそんな2人を驚きながらも微笑ましく見ている。  律と並んで歩くことにも抵抗のないまどか。  本当にこのまま……まどかさんが俺を選べばいいのに。  そんなあり得ないことすら考えた。周との子がお腹の中にいても、可愛い弟との子供。自分の子供として育てることだって抵抗はない。そりゃもちろん、自分との子ができたらそんなに幸せなことなんかないけど……そこまで考えて律はさあっと顔を青くさせた。  なんてこと考えてんだ俺……。周にもまどかさんにも幸せになってもらいたいって思ってるはずなのに……。  生まれて初めて抱いた恋愛感情は中々いうことを聞いてはくれない。千愛希と2人で話している時だって、そのまどかと似た風貌から彼女を思い出させるのに、目の前に本物がいたらそちらに夢中にならない方がおかしい。  当時はまだ周とまどかが住む家を建てている途中で守屋家に2人とも住んでいた。嫌でも帰宅すれば周にもまどかにも会うことになる。更に、仕事から帰ってくれば笑顔で出迎えてくれるまどか。  一緒に住んでいることでより近い存在に思えてしまうのも致し方ないことだった。
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