異性の友情は存在する

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 更にまどかは、千愛希は周といても嫌な気分にならない。だからきっと律とはお似合いだと思う。千愛希とは付き合わないのかというようなことを律に尋ねた。  その時には実感させられる。自分のことなど一切異性として見ていないことを。まどかにとって律は夫の兄でしかなく、千愛希と付き合ってほしいとすら思っているようで、律は自分でも呆れるほどまどかに恋い焦がれていることに思わず笑ってしまった。  バカだな……俺によそ見するような女性なら、俺が好きになるはずなんてなかったのに。周しか見えないこの人だから好きになったんだった。  そう気付かされた律。もしも仮にまどかが周から律に乗り換えたなら、律はきっと南極にでも放り出されたかのように熱が冷めてしまうだろうと思えた。  これは難解だな……。まどかさんのことは手に入れたいのに、その条件にあてはまるような人だったら幻滅するなんて……どっちみち一生手に入ることなんかない。  その事実に気付いた時、ふと気持ちが軽くなったような気がした。  千愛希はそんな律の思いなど知らず、憧れのまどかの役に立ちたいと自らの能力を駆使して、まどかをつきまとう男から救った。  千愛希はまどかのためなら、時間も技術も惜しまず使った。  律はふと思った。自分はまどかのためにどこまでしてやれただろうか。義兄という立場で周が仕事で対応できない時の代わりでしかなく、2人にアドバイスをするくらいがやっとだった。  直接まどかの危機から救ったことは一度もない。そう考えれば、自分の恋愛感情よりも周や千愛希のまどかに対する愛情の方が余程深い気がした。 「ねぇ、なんでそんなにまどかさんのために躍起になってんの? まだ出会ったばっかであの人のことなんも知らないでしょ」 「なに言ってんの律! 私はね、まどかさんがいてくれたから励みにもなったし仕事も頑張れたの。今までたくさんのものをもらってきたらその恩返しがしたいの」  平然とそう言ってのけた千愛希に、律はそっと息をのんだ。
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