異性の友情は存在する

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 耳まで真っ赤にさせた律は、手の甲で顔を隠し「付き合うって言っても、そのさ……失礼かもしれないけど、俺もあんまり恋愛感情の自覚はない」と素直に言った。 「でも、千愛希とならこれから先も一緒にいたいって思えた」  律の素直な言葉が千愛希には嬉しかった。恋愛感情をもたずに今までの彼氏と付き合ってきたことを、千愛希自身も後ろめたく思っていた部分があった。  だから律の言葉は、千愛希の過去さえ肯定してくれるようだった。 「そっか。ありがとうね。私も律のこと好きだけど、多分恋愛感情とは違うと思うの。それでも律がそう言ってくれたことは純粋に嬉しい。周りの人達とは形は違うけど、私達は私達だから……えっと、よろしく?」  ふっと千愛希が微笑んだ瞬間、律の胸にストンとなにかが落ちてきたような気がした。  こうして2人の交際はスタートしたわけだが、2人はこの奇妙な関係に満足していた。律にとっても千愛希にとってもお互い大切な友人だった。  男女の友情は確実に存在した。けれど2人はあえて付き合うということを選択した。  律も千愛希も漠然とだが、友情の向こう側にあるなにかが掴める気がしたのだ。千愛希はまだ知らぬ感情を、律はまどかの存在を超えられる新たな感情を。  付き合ったからといって友人の時と大きくなにかが変わったわけじゃない。律が昔付き合った女性達のように自ら抱きついてくるわけでもないし、キスをせがむわけでもない千愛希。  反対に千愛希が付き合ってきた男性達のように、激しく千愛希を求めたり触れたがったりなどしない律。  キスすることも、もちろん肉体関係に発展することもなく半年以上が経過した。
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