視線の先

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 さすがにもう1台は買ってやれないと父は泣く泣くそれを倉庫に片付けた。  修理に出されることもなかったそれを、興味本位で分解し始めた千愛希。この頃から、パソコンに対する知識が付き始めた。  手探りで修理を試みる千愛希。父の方の兄と共に、あーでもない、こーでもないと言いながら毎日夢中になって触っている内に、仕組みについて理解し始めた。  かなりの時間を要したが、電源が付くまでに修復させた。それを見て驚いた父が、ありとあらゆるパソコン関連の本を千愛希にプレゼントした。  小学生であり、読めない字の方が多かったはずだが、一度興味を持ち始めた千愛希の集中力は並大抵ではなかった。  食事も睡眠も後回しにして熱中した。言語は父に聞きながら、必要なことは辞書を使って調べた。  すっかりパソコンの虜となった千愛希はプログラミングを学び、小学校高学年になる頃には、簡単なゲームくらいなら作成できるようになっていた。  パソコンを通して様々なことを知れる。それは時に勉強にも役立った。  あんなにもパソコンに興味があった兄弟達も、千愛希のように華麗に使いこなせるわけはなく、あっという間に次に与えられたテレビゲームに夢中になった。  学ぶことの楽しさを知った千愛希は、学力も面白いほどに伸びた。将来はシステムエンジニアになりたいと夢を持ち、進学校へ入学したのだった。
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