見据える未来、払拭できない過去

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「確かにおかしいみたいですね。ちょっと、失礼」 「ちょっ……」  千愛希は、鍋田のパソコンを奪った。作業中の画面から飛んでシステム管理へと入った。  皆が眉をひそめて見守る中、千愛希は口を開いた。 「ねぇ、曽根さん。どうして配信予定日を変更しなかったんですか」 「それは……」 「もしかして、開示する前に情報漏れたりしました?」  千愛希の言葉に事務所内は静まり返った。情報漏洩などあり得ない。そう思いたかったが、睦月の元に1通のメールが届いていた。 『配信、楽しみにしています』  外部からのメールだった。返信しようにも既にそのアドレスは使用されていなかった。まだ会社として配信予定を開示したわけではない。それなのに外部から連絡がくるなんて、誰が情報漏洩なんてしたんだと睦月は社員全員に問い詰めたが、誰も覚えはなかった。  慕っている睦月を貶めるようなことをする人間もいなかった。  副社長という立場の睦月は、もしかしたら内部に犯人がいるかもしれない。言えずにいたとしたらそれが明るみに出ることもない。今後この情報が開示前に世に出たら、ゲームエンジンを使用した会社にも迷惑をかけることになると頭を抱えた。  大崎には相談していた。暫く悩んだ大崎はとりあえず千愛希を送ると言っただけだった。  まさか千愛希にここまで見破られるとは思っていなかった。配信予定日に間に合わないことはよくあることだ。しかし、情報漏洩の事実は会社の信用問題に繋がる。なんとしてでも外部に漏れるわけにはいかなかった。
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