見据える未来、払拭できない過去

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 若くして人気アプリゲームを多く配信させている会社の初期メンバー。肩書きは副社長でも、経営者の1人に違いはないし、その事実は自社だけでなく、他社にも知れ渡っている情報である。  実力もあり、睦月と結婚したい女性など山ほどいる。けれど、睦月は千愛希でなくては嫌だった。  別れてから、別の女性と付き合うことも考えた。しかし、どうしても千愛希の顔が過る。  別れて2年近くが経ち、1年前には大崎の元を訪れ経営について会議をした際、千愛希と顔を合わせた。久しぶりに会った千愛希は相変わらず凛として美しく、胸が痛むほどに見とれた。  時間が風化してくれるはず。そう考えていても、そんなはずはなかった。今回、千愛希の手を借りることになり、自分がノウハウを教えた部下であり、元婚約者に助けを請うことが情けなかった。  更に今後も千愛希の力がなければアプリ配信どころか、会社の経営にも関わってくるはずだと自分の不甲斐なさを責めた。  部下達の噂のことを知っていて、事務所にくることだって嫌だったはず。それを仕事だからと言って、真っ向から仕事に専念する。  睡眠も食事も摂らず、無気力になりつつあった社員達。結果、回復を優先させた千愛希。全ての判断が睦月にはできないことだった。自分よりも優れた頭脳を持つ女性。  睦月は、憧れつつも虚しく、嫉妬すらする。社員達の気持ちもわからないわけじゃなかった。手放しで千愛希の才能を認めるほど大きな器の持ち主ではない。そんな自分が睦月は嫌になる。  それでも千愛希は綺麗だった。仕事に向き合う彼女はプライベートで見るよりも、生き生きとしていて彼女の全てを手に入れたいと思った。
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