見据える未来、払拭できない過去

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「今日は私に対してわかりやすいほどの敵意を剥き出しにしていましたね」 「それは……ごめんな。気が悪かっただろ。俺達の問題だから仕事には関係ないって皆に説明したんだが、中々……」 「ええ。気持ちの良いものではないですね。でも、やっぱりひっかかるのは彼を筆頭に、私にやっかみを抱いてる気がするんです。田所さんからも木田さんからも、そんなに嫌な空気は感じませんでしたし」 「あ、ああ……。田所も木田もそもそも他人のことを悪く言うような人間じゃないんだ。仕事に対してだって真面目だし……」 「これはあくまでも私の憶測なので、仮説として聞いてくれますか?」 「……なんだよ」 「鍋田さん、battereから好条件で戻ってこれるよう話があったんじゃないでしょうか」 「まぁ、今までの話からするとそう考えるのが妥当だろうな。ただ、なんで今この時期に」 「そこなんですよ。多分、鍋田さんは本気で曽根さんを尊敬していたと思いますし、ちゃんと慕っていたように見えました。ただ、私のことは気に入らなかったんじゃないですかね」 「出世のことか?」 「ええ。まあ、私には社長秘書という肩書き以外に役職はありませんけど、収入は彼らよりもよっぽど上ですし」 「それは仕方ないだろう。うちは、実力ある者にはそれなりの対価を支払う方針だ」  睦月は当然だ、と大きく頷いた。大崎と共に睦月達が立ち上げた自社、develop(ディヴェロップ) Pe(ピーイー)には開発、発展に加え、才能を伸ばす意味でも使用されるdevelopと5人の経営者とレーダーチャートに使用される5角形、それぞれの才能をより正多角形に近付けていくという意味も込められ、pentagon(ペンタゴン)の頭文字であるPeが会社名の由来となっている。  その由来通り、才能をより成長させ自社へ貢献してくれた社員には惜しみ無くその対価を支払うことを売りにしていた。
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