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フィドルとギター。二つの楽器の音は重なり合っていた。
その音楽は、あたしに木の温もりを喚起させた。
「近くに酒場でもあるんだ、きっと」アイリーンは言った。「やっぱりこの町に、人はいるんだ」
「そうみたい。……死体以外にもね」
音楽に導かれるように、あたし達は前進を続けた。
音楽があたし達を手招きしている。
十字路に出た。
どうやら、十字路を左折した先でフィドルとギターの演奏が行われているようだった。
ついにこの町の人間と遭遇出来る。
あたしは唾を飲んだ。
ドクター・Sその人にはすぐに出会えないとしても、町の人から彼について何らかの情報を引き出せるかもしれない。
まずは聞き込みだ。
どんな強面のアウトロー達が待ち構えていようと、恐怖心に飲まれてはいけない。
あたしにはリボルバーがある。
弾だって、この町に入る前に六発すべて込めた。
いざとなったらこの銃が、あたし達を守ってくれるはずだ。
あたし達は十字路を左折した。
「明かりだ……」あたしが呟く。
通りに面したいくつかの建物の中に、明かりが灯っているのが見えた。
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