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3-1 砂は血の味
荒野だった。
砂ぼこりと強烈な自由の匂いが混じりあうざらついた空気を、肺がいっぱいになるまであたしは吸い込んだ。
歯ぎしりをすると、じゃりっと音がした。砂のせいだ。
そして血の予感が、あたしの口の中に広がった。
――復讐の味がする。
ホルスターに収まるリボルバーの感触を指先で確かめる。
人差し指で、アイボリーのグリップを優しく撫でた。
銃は滑らかな曲線を描いている。そして冷たい。
「きっとあの町にいるはず」
あたしは台地の上で馬に跨り、壮大な光景を眺めていた。
眼前に広がる、一面の荒野。
大地は地平線まで延々と続いていき、ところどころに転がる大きな石、巨大な岩山や雑草、枯れた低木がその単調な光景に気持ちばかりの彩りを加えていた。
ここはインディカ大陸西部、――荒涼地帯を意味して名づけられた――“デソレーション・エリア”のど真ん中。
代り映えのしない景色の向こう側、はるか遠くにその町は見えた。
まるで、大海にぽつんと浮かぶ小さな船のようだ。
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