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由佳も今日はおすましして、めっきり口数が少ない。
和装が二人をしおらしくさせ、普段とは違う空気を纏わせるのだ。
「夏海、綺麗よ」
「由佳もね」
二人は本来なら、ゲラゲラと笑うところだが、そうはしない。
そんなことしなくても、しおらしく小股で歩くだけで、華やかなその出立ちが、周りの注目を集めているからだ。
そうなっていることが、参道に近づくに連れ、肌で感じられるようになり、それが内心楽しくて、嬉しくて、二人ともほんのりと、顔を赤らめて歩いている。
「あっれー、夏海と由佳じゃないか。えらく気合い入ってるなー」
神社の参道沿いに、何代も土産物屋の店を営む宮田屋の長男は、夏海と由佳の同級生で、夏祭りの忙しい今時分は、毎年店の手伝いをしているのだ。
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