夕立ち

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「お手伝い、ご苦労様」 夏海は言って、由佳が小さな笑顔を添えた。 そして宮田屋の長男が、二人に見惚れているうちに、また二人は歩き出した。 「ちょっと待てよ、お茶でも飲んで行けよ」 我に返った宮田屋が、声をかけたが、二人はだいぶ離れた後だった。 歴史の浅い夏祭りは、交通規制された参道に、特設ステージが設置されて、そこではカラオケ大会が開かれていた。 夏海と由佳は、せっかくの和装が乱れるのが心配で、客席には座らず、立ったままその様子を、時々扇子をはたはたとさせながら、しばらく見学した。 何人かの知り合いが、出場していたので、夏海は由佳と二人で、こそこそと歌っている人が誰なのか、噂したりした。
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