1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「雨、止まないね」
助手席に座っている私は運転席に向かって話す。
「すみません、僕のせいでこんな事になってしまって」
相川くんは今にも泣きそうな声で言う。悪いのは私なのに。私が急かしてしまったからこんな事故になってしまった。それよりも、早く助けを呼ばないとなあ。でも、上川課長の怒り顔を思い出すと躊躇してしまう。
「先輩、か、会社に電話しないんですか?」
相川くんは半泣きで促す。
掛けないとなあ、面倒なことを先延ばしにしても良いことなんか無い。
私はスマートフォンを手に取った瞬間。
"ゴー"という音と共に強い衝撃が走った。車に何かがぶつかった。その衝撃で私達は前に押された。
「先輩、な、なんですかこれ?」
私が後ろを向くと、車の後ろの窓は茶色い何かで覆われている。その何かは窓ガラスを突き破った。飛び散るガラスの破片は私の顔を目掛けて飛んできた。私は慌てて顔を座席の背もたれに隠したが、遅かった。
「せ、先輩!わああー!」
最後に耳の奥で相川くんの叫び声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!