思わぬ雨が招く災い

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 映る景色は全てざわついていて、右へ行くべきなのか左へ行くべきなのか判断ができない。視界が完全に閉ざされている状態。いや、視界だけではない、寧ろ聴覚の方がやられている。  聞こえない。  「……い……もうし……」  隣で相川くんが叫んでいるのは何となく感じ取れる、だけど彼が叫んでいる内容はさっぱりだ。 "ザーザーザー"  頭のてっぺん、肩、足元、打ち付ける雨は暑さを和らいでくれるを通り越して痛い。鞭で叩かられる感覚はこんな感じなのか?と、考えてしまうほどの痛み。  「あれ!」  耳の奥を突き抜いて、頭の中まで大きな声が響く。  右に振り向くと、真横で相川くんが叫んでいる。私の耳元で……鼓膜が破れなくて良かった。と安堵していると、相川くんは右手を上げて、どこかを指差している。  「あの家!あの家の軒下に避難したらどうですか」              
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