夏祭り

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夏祭り、当日。 私は今、わたあめを買うために列に並んでいる。 時刻は18:00の少し前。待ち合わせ時間にはもう、間に合わない。 あいつはどんな反応をするだろうか。 驚くか、笑うか、それとも6年も前のことなんて忘れてしまっただろうか? それでもいいか、と思う。 その分、今年のことは忘れないようにしてやろう。 今までで1番楽しい夏祭りにしてやろう。 まずは、サプライズでわたあめだ。 そう思っていたのにーーー 「やっぱり、ここか。なかなか可愛いことしてんじゃん。」 あいつはどんな顔をするだろうと想像して列に並んでいた私は、横に立っていた存在に気づいてなかった。 そこには、私と同様浴衣姿の悠がいた。 わたしが考えていたことがお見通しだったようで、にやにやと笑っている。 昔はあんなに可愛かったのに。 なんだか恥ずかしくなって、真っ赤になった顔を悠に見られないように俯く。 「俺のまね?なつかしいね」 顔を覗き込んできた上に、図星をついてくる。 「うるさい。最近食べてないから買おうと思っただけ」 「わざわざ集合時間に遅れて?」 「別にいいでしょ」 こうして言い合いをしていると、昔に戻ったみたいだ。 普段は弱気なくせに、譲れないことがあると、絶対に折れない。 そんな悠を少し、すごいと思っていたことは、ここだけの秘密だ。 そうこうしているうちに、いつのまにか、私達の番になっていた。 2人分お願いします。と屋台のおじちゃんに頼んでお金を払おうとしたら、 横から手が伸びて来た。 その手が、おじちゃんに2人分の代金を払う。 そして、出来上がったわたあめを受け取り、片方を私に渡して来た。 あまりにも自然にやってのけた悠を見て、思わずぽかんとしてしまった。 そんな私に少し呆れたように言う。 「ほら、行くぞ」 歩き出す背中に向かって、ぼそっと呟いた。 「6年越しのお礼、しようと思ったのに」 「お礼なら、ほれ」 独り言のつもりだったのに、聞こえてしまったらしく右手を差し出してくる。 その様子に、私は慌てて鞄からお財布を取り出そうとした。 しかし、呆れたような声と共に、左手が悠の右手に引かれた。 「そっちじゃねぇって。お礼は、これ」 そう言って、にやっと笑いながら、悠は繋いだ手を持ち上げて見せた。 それあとの私と悠については、また別のお話。
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