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2日後の夏祭りの待ち合わせ場所などを決めてから電話を切り、クッションを抱いてベッドに座る。
毎年8月の始めに行われる夏祭り。
悠と最後に行ったのは、小6の時だ。
あれで最後かと思っていたけど、今年で本当に最後になるのかもしれない。
そんなことを取り留めもなく考えていたら、部屋のドアをノックされ、お母さんが入ってきた。
「ねぇ、鈴。浴衣、あるんだけど、着る?」
目を輝かせながら。
夏祭り、当日。
私は今、わたあめを買うために列に並んでいる。
時刻は18:00の少し前。待ち合わせ時間にはもう、間に合わない。
あいつはどんな反応をするだろうか。
驚くか、笑うか、それとも6年も前のことなんて忘れてしまっただろうか?
それでもいいか、と思う。
その分、今年のことは忘れないようにしてやろう。
今までで1番楽しい夏祭りにしてやろう。
まずは、サプライズでわたあめだ。
そう思っていたのにーーー
「やっぱり、ここか。なかなか可愛いことしてんじゃん。」
あいつはどんな顔をするだろうと想像して列に並んでいた俺は、横に立っていた存在に気づいてなかった。
恥ずかしくて、俯いてしまう。
「僕のまね?なつかしいね」
にやにや笑いながら、顔を覗き込んできた上に、図星をついてくる。
「うるせー。最近食ってないから買おうと思っただけだ。」
「わざわざ集合時間に遅れて?」
「別にいーだろ」
見透かされていたことが恥ずかしくて、あいつから顔を背ける。
前を向くと、いつのまにか、俺の番になっていた。
2人分買って、片方を渡す。
そういえばしてなかったな、と
「6年越しの、お礼」
そう呟いたあと、やっぱり少し気恥ずしくて、
「ほら、行こうぜ」
と、少し大きめの声で言う。
あいつは、きょとんしたあと、微笑んで
「ありがとう」
と言った。
そして、ふざけた調子で聞いてきた。
「手、つなぐ?」
「つながねえよ!」
昔のように戻れたような気がしたのは、きっと俺だけじゃないと思う。
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