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消しゴム人形
ヒデは部屋のすみで膝をかかえ、ため息をついた。
エリちゃんの人形を、こわしてしまったのだ。
人形といっても、二つの消しゴムを針金でくっつけて、油性ペンで顔を描いたものだけれど。
「大嫌いって……嫌われちゃったよ」
ヒデは再度ため息をつく。
「だいたいタケシのやつが……」
学校の帰り、エリちゃんの家に寄って三人で遊んでいた。
エリちゃんお手製の人形を我先に見ようととり合った結果、人形はバラけてただのボロ消しゴムになってしまった。
いつも笑顔のエリちゃんの顔がみるみる泣き顔に変わり、ヒデもタケシもどうしていいのか分からず、おろおろするばかりだった。
「あ~もう!」
ヒデは立ち上がった。
エリちゃんに謝らなきゃ。
机の上の筆箱を開けて、消しゴムをとり出す。勉強嫌いが功を奏して、ほとんど使われていない四角い消しゴム。
赤い油性ペンで蝶ネクタイを描いてみた。
あとは顔……。
引き出しをあさってみるが、消しゴムは見あたらない。
蝶ネクタイの描かれた消しゴムをにぎりしめ、貯金箱から最後の硬貨をとり出すと、ヒデは家をあとにした。
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